*・*・犬のニュース・*・*

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映画『犬と猫と人間と』
10月10日、日本のペットを巡る現状を追った、
ドキュメンタリー映画が公開されます。

愛犬家には、ショッキングで
心が痛くなるような内容かもしれません。
実は、この映画製作はそんなみなさんと同じように動物を心から大切に思う、
一人のおばあちゃんから始まったのです。

スポンサーはたった一人の”猫おばあちゃん”こと、稲葉恵子さん。
映画製作とは無縁の稲葉さんでしたが、
長年捨て猫の世話を続ける中で、ペットを取り巻く環境を見続け、

「どうか、動物たちの命の大切さを知ってもらいたい」
「不幸な犬猫を減らしたい」

との想いから、満期を迎える生命保険を資金として提供することを決意。
ドキュメンタリー映画で定評のある、飯田基晴監督のもとを訪れます。

飯田監督のデビュー作は、『あしがらさん』(02)という
ホームレスの日常を追った作品。
見知らぬ老人からの映画製作の話に、当初戸惑った飯田監督も、
猫おばあちゃんの熱意に押され、作品を手がけることを決意したといいます。

猫おばあちゃんの数少ない、撮影の条件のひとつは、
「私が生きている間に、完成させること」という締め切り。

撮影は、4年間もの長期間にわたってます。
その間、飯田監督の取材の日々は、想像以上につらい現実との
対面ばかりだったといいます。

少子化の影響もあり、2兆円規模とも言われる日本のペット産業。
ペットの飼育数は犬1310万1000頭、猫1373万8000頭。
全国でたくさんの犬・猫が飼われている一方で、
1日あたりの犬・猫の処分頭数は約1000頭にものぼります。

日本は、ペット天国どころか、
犬や猫たちにとっては地獄列島と呼ぶべき状態なのです。

映画中では、これまえ撮影取材許可がなかなかでなかった、
収容施設のなかにもカメラが入っています。

収容される動物たちのなかで、引き取り手が見つかるのは、
数%というきびしい現実。

避妊手術を受ける野良猫たちの様子。
摘出された子宮のなかには、すでに形が確認できるほどまで
育った胎児の様子も確認できるシーンも・・・

その胎児に手を沿え、搾り出すように
「命、そのものですね」とつぶやく飯田監督のその言葉は、
決して演出ではなく、動物たちの実情を目の当たりにし、
「動物愛護って大切だよね、というキレイゴトで済ませたくない」
という強い信念から記録された映像といえます。

「取材中は辛いことばかり。悩みっぱなしでした。
動物たちが処分されるシーンの撮影はかなりヘコみました」
と飯田監督はトークイベントで胸の内を語っている。

この映画は、動物好きな人たちにとっては、
かなりヘビーな映像も盛り込まれていますが、
単に陰鬱な面だけを見せているのではなく、犬や猫たちの命を
少しでお救おうと尽力している施設の職員や融資者たちの姿も追っています。

救われる命は、わずかではありますが、決してゼロではない。
また、環境省が今後9年で処分される数を半減しようと各自治体の収容施設
・譲渡施設の改善に動き出したことも伝えています。

取材期間が、4年間と長引いたため、
当初猫おばあちゃんとかわした、締め切りの約束は果たせなかったものの、
それ以外の注文は、誠実に応えたといいます。

生前、
「人間よりマシいたい。動物のほうが」と語っていた、稲葉さん。
しかし、心の底では、人の心の優しさ、現実を変えられる力を信じていたはずです。
この映画を見た人たちが、そんな人本来の姿にもどることを願っていたのかも
しれません。

公開は、2009年10月10日。
公式ホームページから、詳細な情報を見ることができます。

●『犬と猫と人間と』
企画/稲葉恵子 
監督・撮影・編集/飯田基晴 
撮影/常田高志、土屋トカチ 
配給/東風 
10月10日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開。
(c)映像グループ ローポジション